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BLUE MOON

第4章 スタート


「気に入ってるなんてとんでもないですよ!」

食事中だと言うのに声をそんなに張り上げて

「三時間に一回コーヒーのオーダーメールは来るし、正式にアシスタントに就かされるし」

モモは顔を真っ赤にして唇を尖らせた。

「それにね」

どうやらモモは怒り心頭らしい。

茶碗を持ったままこの一週間に起こった出来事を一気に喋りまくった。

「クククッ」

その一生懸命さが俺の心に宿った不安を拭い去る。

「笑い事じゃないですよ」

「ゴメンゴメン」

モモは一番大きなジャガイモを頬張ると唇を尖らせて咀嚼した。

モモの顔が見たくて空港から直接会社に向かったのにキミは五十嵐と仲良くランチ中だと言うじゃない。

正式に五十嵐のアシスタントに就いたと魚住から聞いたのはそのときだった。

良いアイディアだろ?なんて得意気に鼻を鳴らしていたけど俺は正直焦った。

確かに五十嵐は仕事が出来る。俺の顧客を継ぐのもアイツだろう。

でも、アイツは厄介だ。

「涼さん聞いてます?」

「聞いてるよ」

闇を抱えたまま部長室に報告をした帰りに給湯室の前を通ると芳しい香りが俺の鼻孔を擽った。

姫の後ろ姿を見たときには心が跳ねた。

そして、振り向いたキミは俺が思った以上に満面の笑みを向けてくれた。

すぐにでも抱きしめたかったけど廊下の向こうから昼休みを終え部署に戻る人たちの声が聞こえたからこのときも我慢した。

俺と付き合ってることが五十嵐にバレたら最悪だ。

「仕事行きたくないなぁ」

「二人で有給とる?」

「そんなこと出来るわけないじゃないですか」

「なら、明日は俺の専属で働いてよ」

「え…」

「今回の出張の成果をまとめるのを手伝って欲しいんだ」

「喜んで」

さっきまでプンプンに頬を膨らませていたのに今度はニッコリと微笑んだ。

「明日 二人でランチしようか」

「いいの?」

俺はいつからこんなに独占欲が強くなったんだろう。

「たまにはいいんじゃない?」

「それなら、安くて美味しいって評判のパスタのお店があるの!」

「そこにしようか」

五十嵐とはランチして俺とはまだなんてやっぱり気に入らない。

「それよりモモ」

「はい?」

「早く食べてくれないとお仕置きの時間が増えるよ?」

「はぃぃ?!」

アイツは知らないキミの素肌に早く触れたいんだ。

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