BLUE MOON
第5章 嫉妬
週明け月曜日
毎朝の日課であるコーヒーの用意をしている私のところに麻里が顔を出した。
「そか…」
「麻里がそんな顔しないでよ」
あの目撃事件を気にしてくれていたからだ。
土曜日は当てもなくフラフラと街をさ迷ったけど
「昨日は二人で近所のスーパーにお買い物に行ってお部屋でのんびりDVD見たの」
「相変わらず安上がりな彼女ね」
「そう?平日にお米買ったり洗剤買うのって結構重労働じゃない?だから付き合ってもらったの」
お洒落してデートしたわけじゃないけど
「ランチぐらい行けばよかったのに」
あんな所を目撃してしまったあとに何気ない日常がおくれたことが嬉しくて
「たくさん買えたからいいんだ」
一緒に住んでるっていう特別な感じを噛み締めてた。
~♪~♪
「じゃ、今日もよろしくね…もしもし」
麻里は朝から鳴り響く電話に出ると手を軽く上げて給湯室をあとにした。
「はぁ…」
麻里にウソはついていない。
あの日帰ったあとほとんど寝ていなかった私は涼さんに抱かれながら呆気なく意識を手放してしまった。
次に目を覚ましたのは時計の針が天辺を指すころ。
まるで白雪姫のようにキスをして起こされた。
それから涼さんが作ってくれたブランチを食べてスーパーに買い物に行って借りてきていたDVDを見て、夕食の準備を二人でして美味しくいただいて、昨晩のリベンジだと涼さんに笑われながら抱き上げられて甘い夜を過ごした。
でも…不安が拭い去られた訳じゃない。
スーパーで袋詰めをしているときに鳴った涼さんのスマホ。
彼の電話から女性の声が漏れ聞こえると彼はスーパーから出て話始めた。
いつもなら仕事の電話も友人や家族からの電話も私の前で普通にするのに
…なんて考えすぎかな
でも、その瞬間に金曜日の夜の光景が頭をよぎったのは確かで
「大丈夫、大丈夫」
私のなかではやっぱり消化できないことのひとつだった。
「な~に一人で喋ってんだ」
「わぁっ、りょ…チーフ!」
のんびりとしすぎてしまったんだろう。
涼さんが朝のコーヒーを催促しに給湯室に顔を出した。
「はぃ、どうぞ」
「ありがとう。…チュッ」
「ちょ!ちょっと!!」
クスリと笑って給湯室を出ていく彼
疑う余地はないのかな。
「桜木チーフおはようございます」
でも、彼はモテるんだよね。