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BLUE MOON

第7章 立場


「涼さん…朝ですよ」

いつも私が起こされていたのに

「んんっ…おはよぅ…」

ここ最近は選手交替、私が起こす日々が続いていた。

「モモ、おはようのアレして?」

「したら起きます?」

「…早く」

よほど疲れているのであろう、掠れた声の涼さんは目を瞑ったまま手だけを布団から出して私の頬に手を添える。

「もう…」

その大きな手に小さな私の手を重ねて

…チュッ

最近の日課である頬におはようのキスを贈る。

「涼さーん!起きてくださーい!」

いつもはこれで起きてくれるのに

「くち…」

「はぃ?」

「口にしてくれなきゃ起きれない」

まだ瞼を開けられない涼さんは時間稼ぎをするようにわざと拗ねてみせた。

頬にするのだってまだ恥ずかしいけど

「今日は特別ですからね!」

…チュッ

今の私たちにはとても貴重な時間だったりする。

涼さんはクスリと笑いながら重い瞼を開くと頬に添えていた手を後頭部に差し込んで

「おはよう、モモ」

「んっ…」

私を引き寄せ唇を啄んだ。

「よしっ!充電完了!」

涼さんは勢いよく起き上がると頬を染める私の頭をポンと叩きバスルームに向かった。



「カフェオレ?」

「うん、たまにはいいでしょ?」

バスルームから出てくると涼さんは一気に仕事モードに入る。

髪をセットして戦闘服であるスーツを纏った彼は疲れを一切見せない戦士だ。

そんな彼に私は少し甘めのカフェオレと忙しい朝でも摘まめるようにフルーツを何種か用意する。

「久しぶりに甘いコーヒー飲んだ」

休んでほしいと言っても仕事を減らせないかと提案しても

「甘すぎました?」

「いや、このぐらいのが丁度良い」

彼の仕事ぶりを一番近くで見ている私からすればそれこそ無理難題なんだってわかってる。

フルーツをいくつか口に運んだ涼さんはジャケットを手にすると今朝も私より早く出勤する。

「涼さん…」

「大丈夫。俺の体はそんなに柔じゃないから」

優しく微笑んだ彼の瞳に私は微笑むことしか出来ない。

「いってきます」

今思えば気付かなかった私がいけなかだたのだろう。

疲れの原因を作っているのがアタシだったなんて

「いってらっしゃい」

重ねた唇にエールを乗せるだけの女じゃ彼のお嫁さんは務まらないって…

笑顔で手を振る私に…ねぇ誰か教えてあげて

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