オキナグサ
第6章 違和感
そんな風に浮き足立っていたからだろうか
普段ならちゃんと察知して逃げられているはずの取引先の人間からの誘いに、気づかずついて行ってしまった
触れられた手が気持ち悪くて
心は地の底に落ちたように沈みきった
ダメだ
この人は俺より立場も力もある
このままやりあってたら、いつかは流される
どうしよう、どうしよう、と頭を働かせようとするが、酒の影響でぼやける頭では良い案が全く浮かんでこない
「お前もそんな小綺麗な顔してスキモノなんだろ?」
完全にセクハラのところまで触られて
挙句言われた下品な物言いに、正直涙が出そうだった
男が好きだからって誰でもいいわけじゃないのに
くそ……っ
そんな時に、不意に聞こえたシャッター音に肩が震えた
最初は通りすがりの人がSNSにアップしたりするために撮ったんだと思ったから
こんな奴に犯されて
写真を広められたら終わりだ
けど、そんな風に思ったのは一瞬で
抗議の声を上げた高橋さんに応えた声が
「写真、撮ってるんだけど」
まさか、ミホさんだなんて思わなかった
後から思えばミホさんが必ずしも助けてくれるとは限らなかったんだけど
でも俺は安心して力が抜けてしまった