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オキナグサ

第6章 違和感


目の前にあった聖くんの口が微かに動く


言おうとして
言えない


それを何度か繰り返して


「……俺の気持ちなんか確かめる前に付き合ったくせに」


と、恨み言をひとつ


「……好きだよ、朝陽さん」


そして、静かに唇が重なった


柔らかい感触なのに、それを感じた脳から電気が流れたみたいに背中がぞくぞくする


くっついて
離れて

またすぐにくっついて
離れて

次はくっついてから、唇で唇を食むように吸われて


「……ふ、ん……っ」


甘ったるい声が喉の奥から漏れた


同性しか好きになれない、と思ってから初めて男性とキスをしたが

やはり抵抗なんてないな


いや、違うか
聖くんだから、抵抗ないんだ


職場にいるあらゆる男性を想像してみても
天地の差というか

手以外での接触はしたくないな


「……他の男のこと、考えたでしょ」
「! わかるのか?」
「わかるに決まってる。俺が同じことしてもきっと、朝陽さんもわかるよ」


俺と同じなんでしょう?、と笑う目が妖艶に光っている

そこには暴力的な感情も読み取れた


あぁ、確かに
わかるかもしれない


俺も、聖くんが他の人のことを考えたら
その人を調べ尽くしてどうにか近づかないようにしたい

かも

しれない

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