オキナグサ
第9章 狂嫉
想像もしてなかった
なるべくなら会いたくない人
というか、記憶から抹消したいほどには関わり合いたくない人と出会ってしまった
「やっぱり! あの時朝陽と一緒にいた子だよな?」
気さくに話しかけてくるな
「子」って言われるほど歳離れてないし
あらゆるところに気が立って、遅れてから「……はい」と不機嫌そうに返事をした
こいつこの前もここの駅にいたよね
なんなの
家が近いのか?
「この前会った時から話してみたいと思ってたんだよねぇ。今時間いい? 少し俺と話さない?」
相変わらず自己中心的な会話の展開の仕方だな
「すみません。今人を待ってて」
「人って、もしかして今日も朝陽のこと待ってる?」
「……」
「やっぱりそうなんだ」
なんなんだ
そのにやけ顔は
やたらとイライラする
顔寄せてくるな
「ねぇ、君さ、朝陽のこと好きなの?」
囁くように言われて
「は?」
離れていった顔は、信じられないぐらい汚く笑っていた
「やめとけよ。アレ俺のだからさ」
「…………は?」
殺してやろうか
衝動的な殺意が、心臓を中心にして爆発するように全身に広がった