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オキナグサ

第9章 狂嫉


何を勘違いしてるのか、にやにや笑いながらやれやれと言う風に首を振った


「やっぱり何の話もしてないのか。全く、可哀想だよな。君みたいな若い子まで騙して」


どうしたらこいつの馬鹿な口が止まるんだろう


そんなことばっかり考えながら、喉元に視線を固定する


「俺のことが好きなくせに、気をひくのが下手な……っが!?」


誰が誰のこと好きだって?


気づいた時には俺は岩橋さんの喉を手で鷲掴みにしていた


あぁ、良かった
こうしたら止まるのか

今後覚えておこう


「……ぐ、が……っ!? かは」


なんか変なこと言ってるな、これ


手で持ったそれを捨てるように地面に放ると、おもちゃみたいに転がったそれが肩で息をしている


「げほっ、げほ、っく……は、はっ……」


駅前の人達がチラチラ見ていくけど、ただの野次馬なだけで声をかけるでも転がってるそれを起こすでもない

世の中こんなもんだよね


「お、ま……っ、何してくれてんだよ!!」


地面のそれが俺に向かって叫ぶ


うるさいな
どいつもこいつも、俺の知らない朝陽さんのこと自慢するみたいに姿表しやがって


会社も
出会う前の昔のことも

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なかったことにしてやろうか

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