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オキナグサ

第9章 狂嫉


「ーーっ」


何か、このドス黒い気持ちを言葉にして表そうとしたその時


「聖くん!?」


遠くから朝陽さんの声が聞こえた


「あさひ、さ……」


風船から空気が抜けていくみたいに、俺の黒い気持ちが音を立てながら萎んでいく


朝陽さんがいる
いる


「おい朝陽! どういうことだよ!! 俺こいつに暴力振るわれたんだけど!!」


地面に転がっていた岩橋さんが立ち上がって煩い犬みたいに吠えてかかる


「大地……? 何故こんなところに……」
「偶然通りかかったんだよ。それで声かけたらこいつがいきなり……!!!」


なんだ、その
俺が頭おかしくて突然殴りかかったみたいな言い方は


弁解したいけど、なんでか口が重くて
開かない

誤解、されたくないのに


そんな思いで朝陽さんを見つめると、朝陽さんがぽん、と俺の頭を撫でてくれた


「大地が怒らせるようなことをしたんだろ」


いつもそうだ、とでも言いたそうな表現に少しモヤッとする

昔馴染みの友人よりも俺のこと庇ってくれてるのに


「なんだよ。いつ俺がそんなことしたんだよ」


でも、噛み付いてきた岩橋さんに対する朝陽さんの答えで俺の心のモヤは一気に晴れた

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