
オキナグサ
第9章 狂嫉
岩橋さんが消えて行くのを見送っていると、くいっと袖を朝陽さんに引かれた
「本当に、すまない。何かされなかったか?」
「大丈夫だよ」
何かされたって程でもないし
むしろ何かしたのは俺の方だったから
敢えて言うなら、朝陽さんの初恋の真相を知りそうになったってぐらいかなぁ
岩橋さん、朝陽さんのこと昔から意識してたんじゃないかな
それでもどうしても男同士ってところに引っかかって朝陽さんを手に入れられなかった
それで、月日が経って自分も同性愛ってものを受け入れられるようになったから、朝陽さんを自分のものにしようとした
みたいな
よくある話だよね
気付いた時には遅かったって話は
こんな可愛い人を、放っておいて誰かに掻っ攫われるなんて考えもしないんだもん
平和で何より
それで大切なものを手に入れられないとか
滑稽の一言だけど
「さ、朝陽さん行こう。晩御飯は?」
「まだなんだ。聖くんは?」
「俺もまだ。食べて行く? それとも何か買って家に行く?」
最近のスーパーって色んなお惣菜あって選ぶだけでも楽しいのが多いよね
なんて考えながら朝陽さんの答えを待つ
すると
