
オキナグサ
第9章 狂嫉
「! 朝陽、さ……っ」
急に顔を近づけられてキスされるのかとドキッとする
結局キスはせずに離れたけど、何がしたかったのかと思ったら
「酒、飲んでるんだろ? 晩御飯はもう済ませたんじゃないのか?」
「!」
背筋を冷たいものが這ったような気がした
「……」
「……空腹の状態で飲酒するのは身体にもよくないから、気をつけないとダメだぞ」
答えられないでいる俺に、朝陽さんは嗜めるように言った
「ごめんなさい……知り合いに会っちゃって、ぐびぐび飲まされたんだ」
「そうか。なら、先に水でも買おう」
「うん。ありがとう」
びっくりした
そんなに的確に突かれると思わなかった
いや、ただ単に飲屋街にいたのを知ってただけってこともあり得るけど
どうしたのかと思った
朝陽さんに気づかれないように息を吐く
気抜いてないで、もう少し引き締めないといけないな
「……今日はどこの店に行っていたんだ?」
「えぇと、馴染みのゲイバーなんだけど……誤解しないでね? 何もしてないから。ママが寂しがるからたまに行くだけ。本当に」
「……俺も連れて行ってくれるか?」
「もちろん。行くときは必ず俺と行ってくれるなら、いいよ」
