
オキナグサ
第9章 狂嫉
今すぐ手を振り払って朝陽さんに抱きつきつつ「俺と朝陽さんが恋人同士なんです!」と宣言したい
したいけど
朝陽さんがカミングアウトされたら困るかも、と思うと何も言えない
固まった俺に、朝陽さんがツカツカ歩み寄ってきて
「!」
「いつまでそうしてるんだ」
俺の重ねられていた手を奪うように取った
「日高さん、この人は俺の知り合いではなくて恋人です」
「!」
朝陽さんの高らかな宣言に、ママは嬉しそうな顔をしたけど日高さんは反対に顔を引きつらせた
「お前……ゲイたったのか……!?」
「朝陽さ……っ」
言っちゃってよかったの?
グイ、と少し強引に肩を引き寄せられて、俺の心臓が跳ねる
「いいえ……彼だけが、特別なんです」
「!!」
なにそれ
やばい、涙出そう
「そう、だったのか……」
「すみません。なので、今夜の相手は他の方にして下さい」
朝陽さんが律儀に頭を下げる
すると、日高さんが苦笑いしながら首を横に振った
「いや、今日はこれで帰るよ。完全に俺の横恋慕だったってことがわかったからな」
横恋慕……
横恋慕……?
「君を探して色んなバーに行ったが、なかなか会えなくて……今日やっと会えたと思ったんだが、仕方ないな」
