オキナグサ
第9章 狂嫉
俺に近づいてきた朝陽さんを見て気がついた
やっぱり見てたんだ
俺の身体拭くための蒸しタオル持ってきてくれてる
俺の身体の横に座って、手を取って指先から拭き始めた朝陽さんを見ると
やっぱりにこにこしてる
可愛い
「朝陽さん」
「何だ?」
あったかい
丁寧に拭かれるの、慣れないけど気持ちいい
「それ、気持ちいい。ありがとう」
「そうか。なら、よかった」
あ、また嬉しそうな顔
朝陽さんが嬉しそうだと俺も嬉しい
他の人から見たらなんて狂気的な光景だろう
監禁して
監禁されて
お互いに満足気ににこにこ笑ってるなんて
「これも嬉しい」
俺が脚を動かしてチェーンの音を立てる
朝陽さんは俺の脚を撫でて、また微笑んだ
「嬉しいか。そうか。締め具合がわからなかったんだが、苦しかったりしないか?」
「大丈夫。起きるまで気づかなかったし、起きてからも動かすまで気づかなかったぐらいだよ」
そうか、って朝陽さんはまた嬉しそうに俺を拭くのを再開する
「真っ暗で見えないんだけど、これどれぐらいの長さなの? どこまで行けるの?」
「リビングまでだ。テレビが観れた方が退屈しないかと思ってな」