オキナグサ
第2章 お礼
「そこ左に曲がった所で止まって下さい」
「はい」
車を止めて「お会計が……」と話し出した運転手さんを見ながら、やっぱり俺が払わないとダメだよねと思っていたら
「……お願いします……」
アサヒさんが素早く財布からお金を出して運転手さんに渡した
払ってくれるんだ
アルコールが抜けて来たのか
習慣的に払わなきゃと思ったのか
どっちにしてもラッキー
おつりを受け取って車を出る
「酔い覚めてきた? 家帰る?」
俺の家からなら駅まで遠くないし
出来るなら帰って欲しい
「……?…………嫌だ」
一瞬きょとんとしてたから
そもそも言われた意味がわかってないなこれは
「はぁ……はいはい。じゃあこっち」
連れて帰ればいいんでしょ
わかりましたよ
まだ築数年でそこそこ綺麗なアパートの、3階角部屋
のろのろ階段を上るアサヒさんを一応気にかけながら上がって、鍵を開けた
「はい、どうぞ」
入ってすぐにキッチン
その奥に生活する部屋が1つだけ
典型的な1Kの部屋
招き入れるとアサヒさんは「お邪魔します」と一応言ってから部屋に上がった
本当に連れてきちゃったよ……
友達以外で入った人いたっけ?