好きにさせて
第9章 理由
風呂から出てしばらくして
俺達は旅館内の食事処へ
向かった
俺がチョイスしたのは
洋食の店
茜は普段
仕事柄和食が多いからや
「こっちでよかったか?
嫌ならまだ変更できるで?」
「ううん、こっちがいい。
和食のお店に行くと
また現実思い出しちゃうから」
現実…
なかなか重い言葉やけど
茜はそれを
さらりと口にした
俺に少しでも
親の話をしたからか
いつもの茜よりも
吹っ切れた感じがして
俺にはそれが
心地よかった
「これ、どういう
味付けしてるんだろ…」
「クスッ(笑)」
「ん?」
「結局仕事のこと
考えてるんやな(笑)」
現実を思い出すからと言うてたのに
茜はマネ出来そうな料理を食べると
そんな話をして
結局小夜のことを
気にしてるみたいやった
好きやったお母さんが
大事にしてた店やから
小夜は茜にとっても
大事なんかもしれへんな…
お母さんにとっても
茜にとっても
ある意味
逃げ場所やったんかな
と思うと複雑やけど
「美味かったなー」
「うん!
すごく美味しかった!
けどお腹いっぱい(笑)」
食事を済ませて
部屋に戻る途中
茜はそう言いながら
俺にお腹をさすって見せた
「そんな腹いっぱいなら
運動せんとあかんなぁ」
そう言うと茜は
「せやな(笑)」
と、俺をチラッと見てから
「冗談だよ?」
と笑った
俺は
冗談やないけど
そんな言葉が返ってくるくらい
茜が元気やいうことが
俺は嬉しかった
「尚?」
「なんや?」
「楽しそうだね」
「お前もな」
「うん」
「あ…」
部屋に戻り
襖を開けると
畳の上に
キチンと布団が敷かれてあった
あーこれやこれ
なんかエロいやつ
「なんやいかがわしいなー(笑)」
そう言うと
ちょっと俺を小突いて
悪戯に笑ってみせる茜が
なんとも言えん
可愛いらしゅうて
抱きしめたくなる
そんな悪戯に笑うてても
いざとなると
恥ずかしがるところも
また
好きなんやけどな