好きにさせて
第2章 二人
「なんや遅なってしもたなぁ。
そろそろ帰るか?」
俺はいつまででも
小夜におりたかったけど
チラチラと
時計を気にする茜をみて
俺からそう声をかけた
「ごめんね?」
「なにが?」
「私が時間気にしてたからでしょ?」
「まぁ・・それもあるけど
あんまり引っ張って
嫌がられたらあかんしな。
ちょっと気いつこうてんねん」
「変わってないね」
「え?」
「いつでも
周りの空気を読んでるところ」
「なんやそれ」
「野崎くんの性格は
困ってる人ほっとけなくて
頼られるの
嫌いじゃない」
「クスッ
まぁまぁ当たってるわ。
藤沢は…」
「ん?」
「強がりで
頼るのが苦手」
あの時も…
お前は最後まで
俺を頼らんかった
「……」
茜は
少し微笑んでたけど
当たってるとも
当たってないとも言わないままやった
「なんや
知りすぎてて
照れくさいなぁ」
「そうね(笑)」
「さ、もう帰ろ。
送ったるわ」
送るというその言葉に
少し迷ってるみたいやったけど
実家を知ってる俺に
断る理由もないと思ったのか
茜は「うん」と返事をして
席を立ち
「ちょっと準備するね」
と、奥に姿を消した