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好きにさせて

第16章 現実


俺が
茜の親父さんと顔を合わせたのは
それから二週間後のことやった


俺は
強面の親父さんに
かなり緊張してたけど
いざ会うてみると
茜の親父さんは
中学の時に見た時よりも
かなり雰囲気が変わっていた


歳をとったからなのか
茜の母親が
おらんなったからか
分からへんけど
随分温和な感じで
拍子抜けしたくらいや


口数は少なく
ちょっと話しにくい感じはしたけど
茜の言う通り
俺とのことは全く反対する様子もなく
一度嫁に出したことがあるからか
俺と茜が一緒に住むことも
特に気にしてはないようで
何の問題もなく
顔合わせは終わった


けど

一人で帰って行く
足を悪くした
親父さんの後ろ姿を見てると
その背中が
妙に小さく見えて

俺は
なんとなく
切ない気持ちになっていた


茜と親父さんの
折が合わんのは分かってるけど。


親父さんを見送って
アパートに帰り
なんや疲れた俺達は
ソファに深く座ったまま
しばらく立てないでいた


「なんや疲れたなぁ(苦笑)
いや、疲れたん俺だけか?」


「ううん、私もちょっと疲れちゃった」


「お疲れさん。
段取り色々大変やったなぁ。
けどとりあえず
ひとつ終わってホッとしたわ」


「…うん」


茜は
次のミッションが
気になるのか
ホッとしてるようには
見えへんかった


「なんや元気ないなぁ」


「そんなことないよ」


そう言って見せる笑顔は
こないだの笑顔とは違う

ほんまに


かわいそうでたまらん


「茜」


「ん?」


「チャージさせてぇな」


そう言って
俺は
抱きしめられたいと
思うてる茜を抱きしめた


「あとは俺が頑張るからな
心配せんでえぇから」


「尚…」


「ん?」


「好きになっちゃったから…」


「あぁ」


「怖いよ」


その言葉に
どう返せばええのか
分からへんかった


言葉にならず
泣いてしまいそうな茜に
優しいキスをして

もう一度
茜を抱きしめた時
俺の心から
言葉がもれた



「俺もや」

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