テキストサイズ

桜花楼の恋

第9章 甦った記憶

・玉森side

その日 俺は、わたと宮田一座の芝居を見に来ていた。



「よっ、俊哉、日本一」



しっかし、あいつは凄いな女形から男衆まで何でもこなし。

“パチパチパチ”

そのたびに客席から割れんばかりの拍手喝采を浴びて。



横「養子に貰われていなかったら裕太も、あの舞台に立っていたんだろうね」



たぶん、フッ



横「そしたら兄弟揃って名役者とでも謳われていたかもしれない」



それはどうだろ?クスッ



横「終わった、行くよ」

玉「うん」



が、俺達の目的は別の所にあったんだ。



宮「タマ」

玉「宮田、すっごく良かったよ」

宮「ありがと、フフッ」

横「さすがは当代きっての名役者、楽しませて貰った」

宮「初めてお目に掛かります宮田俊哉です、ニコッ」

横「横尾渉、少し話しがしたいんだけどいいかな?」

宮「はい」



それは━



横「というわけ」

宮「驚いたぁ、あの若様がキタミツを買った手付けの旦那だったなんて」

玉「手を貸してくれる?」

宮「いつ?その幕府の老中たちが屋敷へ来る日は」

横「7日後になる、が」



もちろん俺達の仲間になって貰うため。



横「問題はどうやって戸塚太夫を郭から出すか」

宮「真っ向から旦那に頼んでみたらどう?」

玉「ちょ、何を言っているの?断られるに決まってるじゃん」

宮「そうかなぁ」

横「違うとでも?」

宮「千ちゃんの親父さんは悪い人じゃない、ちゃんと説明すれば分かってくれるはず」

横「下手に小細工するよりはって言いたいわけ?」

宮「まぁね、それに勝手に抜け出したらそれこそ後でトッツーが大変なことになる」

横「確かに」



えっ、本気?




ストーリーメニュー

TOPTOPへ