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桜花楼の恋

第10章 切なき逢瀬

・戸塚side

広間には、郭で会った時とは違いキリッとした表情の尾張の若君、松平太輔がいた。

真ん中には殿様、その隣には。



「まぁーあの者の舞いのなんと艶やかなこと」



奥方さま。



「男とは思えぬ色香」

「さすが名だたる一座だけの事はある」

「よい役者が揃っておるわ」



ふっ、俺は男娼だよ。

あなた方、幕府の老中方が忌み嫌っている。

そして━



「お待たせ致しました当代きっての名役者、宮田俊哉でございます」



“今だ”

一瞬、藤ヶ谷と視線が合わさり小さく頷くと、俺はさり気なく廊下へと出て。



高田「こちらでござる、 ささ急ぎついて来られよ」



翔の導きで、奥にあるという藤ヶ谷の部屋へ向かう。

そこに…



玉「初めまして戸塚太夫」

戸「君は」

玉「ミツの部屋、みんなで覗いてたんだから俺のことは知っているでしょ?クスッ」

戸「あはっ」



やっぱり、気づかれていたんだ。



玉「障子に穴を開けちゃダメじゃん フフッ」

戸「宮田の弟、裕太」

玉「取り合えず準備をして、そしたらガヤを上手く亮太が連れて来るから」

戸「分かった」



彼は建前上、体調が思わしくなく寝込んでる事になっている。

暫くすると。



藤「トッツー」

戸「藤ヶ谷、ニコッ」

藤「悪いな嫌な役をやらせてしまって」

戸「どうって事ないさ気にしないで、フッ」

藤「けど下手すりゃ父上のお怒りを受け」

戸「お手打ちになるとでも俺、信じているから」

藤「んっ?」

戸「あの時みたいに藤ヶ谷が助けてくれるって」

藤「おまえ、フッ」



それに、これは恩返しみたいなもん。




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