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桜花楼の恋

第10章 切なき逢瀬

藤「じゃ、いいな?」

戸「うん、ニコッ」



老中たちをもてなす場から、肝心の若君が抜けてしまったら。



丸山「若さん来たで」



絶対この部屋までやって来るはず、俺達はそこを突き。



戸「だっ、ダメです若さま、ここは貴方様の屋敷どなたかに見られたりしたら」



肌襦袢姿で絡み合い、連中に見せつけるって寸法さ。



藤「いいんだ俺はお前を抱きたい」

戸「あっあっ、若さまぁ」



バシッ!



父「なっ、何をしている太輔」



思った通り屏風は払いのけられ、そこには物凄い剣幕の殿様と茫然と立ち尽くしている老中方の姿が見え。



藤「これはこれは皆様方、今いいところなんですから邪魔をしないで下さい」

父「お前という奴は!クッ」

老「一体どういうことか若君」

藤「見ての通りですよ」

老「変わり者とは聞いてはいたがまさか男とこのようなことを」

藤「何がいけないというのです惚れた者とチチクリ合いたいのは人間の本能というもの」

老「相手は同じ男ですぞ」

藤「あなた方も見たはず、この者の色香を」

老「だからと言って、それでは子が」

藤「その子を欲しさ権力を得たいがため身体を差し出し女同士で醜い争いごとをする、そんな大奥の種馬になるくらいならこの太輔、子など出来ぬ男を抱いていた方がまだまし」

老「なっ」



藤ヶ谷━



父「なんて事を言うのだ」

藤「男娼たちは、その身を削り必死で生きている」

戸「‥‥っ」

藤「どれだけ彼らの方が愛おしく、いじらしいかしれない」

老「くっ、それが本心だとおっしゃるのですね?」

藤「あぁ俺は女は抱かないって決めているんだ、それでもいいっていうのなら」

老「分かりました、この話はなかった事に」

父上「お待ちを」

老「失礼する!」



パタパタパタ―




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