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桜花楼の恋

第10章 切なき逢瀬

その部屋の前まで来たら、スーッと一息 深呼吸をし静かに障子を開けたんだ。

すると━



五「藤ヶ谷、北山、藤ヶ谷が来た!」



五関の若旦那の声が聞こえたかと思ったら、宏光が物凄い勢いで部屋から飛び出して来てさ。

ギュッ!



藤「…北‥山…」

北「ん…バカっ‥バカバカバカ…バカやろう!クッ」

藤「ごめん、フッ」



とたんに抱きつき。



北「許さね…もっ‥許さ」

藤「チュッ」

北「んっ」



うおぉーっ、熱烈うぅ。



北「…っ、んなことしても許さね‥くっ…俺が‥どんな気持ちで…いたと思っているんだぁ‥ヒックン」

藤「悪かった」



ギュッ!

その胸を叩き、泣きじゃくる姿に誰もが言葉を詰まらせてしまう。



塚「なんだか見ているこっちまで涙が出て来ちゃうよ、クッ」

戸「良かったね北山、フッ」

河「でも切ねぇ…くっ‥」

橋「宏光うぅ、ヒクッ」

ニ「こっ…今夜はさ‥いっぱい甘えちまいな」

五「2人っきりにしてやろうぜ、フッ」



その夜、朝方近くまで全員が眠る事なく。

トッツーの部屋で隣の様子を伺っていたのは言うまでもない。



北「藤ヶ谷、藤ヶ谷あぁ」



聞こえて来る宏光の声は、あまりにも切なくみんなで涙をこぼしつつ。



戸「ううっ…ヒクッ‥くっ」

河「俺達で絶対なんとかしてやるから、クッ」

塚「徳川がなんだ」

橋「こんなに…想い合っているのに‥引き離さないでよぉーっ、うわあぁ」

五「良亮、クッ」

ニ「千賀」

千「おう、ヒックン」

ニ「いざって時はミツを郭抜けさせてでも」

千「分かっている俺だって同じ気持ちさ」

宮「千ちゃん」



トッツーは河合の若旦那の胸の中で泣き続け、五関の若旦那はハッシーを抱きしめ。

俺は宮田の腕の中で、隣ではニカが握り拳を畳に叩きつけ唇を噛みしめながら。

こうして、長く短い夜は過ぎて行ったんだ。

そこにいる、全員の遣るせない想いと共に。




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