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桜花楼の恋

第15章 希望を胸に

宮「母さん父さん、お願いします裕太の頼み聞いてやって下さい」

玉「お願いします!」

父「しかし」

母「その結果、どんな事が私達の身に降りかかるのか分かった上で言っているのですね?」

玉「ごめんなさい、けど」

宮「まだ、そうと決まったわけじゃない」

父「俊哉」

宮「俺達には先の尾張城主になられる方がついているんだ」

母「その若様もお国で謹慎中の身なんですよ」

宮「忘れたの例えどんな理由であれ、まだ自分の意志で決めることも出来なかった裕太を手放したことを」

母「それは」



兄さん…



宮「本来は言い訳なんか通じないことなのに裕太は許してくれたんだよ」



こんな、感情を剥き出しにしている宮田は初めてだ。

俺は、逆に驚いてしまう。



宮「どんなに寂しく辛い思いをさせた事か、それを支えてくれたのは横尾さんなんだ」



自分の為に、親に逆らってまで…クッ



宮「裕太にとっては命と同じ傍にいなければ枯れてしまう」

父「それほど大切な御方なのか?」

玉「はい」

宮「償うなら今しかないんじゃない父さん母さん」

母「…そう‥ですね…」

玉「‥‥っ」

父「親が子の必死の頼み聞かずに命を惜しんでどうする」

母「えぇ、ニコッ」

玉「じゃあ」

父「出発は一月後であったが少し早めるとしよう」

玉「ぁ…ありがと‥ヒクッ」

宮「タマ、ニコッ」

玉「兄さん、クッ」



ギュッ、大好きだよ宮田。

それは、わたが加賀藩へお預けとなってから江戸を去ったことを知った2月初旬のこと。

俺は、宮田一座と共に東北へ下る決心を固める自分の柵(しがらみ)を己で解き放つ為。

ちょうど同じ頃、ミツの太夫お披露目の日が決まり郭では、その準備に追われていた。

春に向けて━




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