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桜花楼の恋

第21章 最後の試練

「やはり、そうでしたのね戸塚太夫」



あのとき、バレてしまっていたわけ。



「そこにおられるのは役者の宮田俊哉殿、そして郭の息子さん、ニコッ」



じゃ北山は?



「心配なさらずとも、このことは私しか知らぬ事ゆえ」



えっ…



「皆様にどうしてもお聞きしたいことがあり今日はお伺い致しました」



それは━



「宏姫と太輔のことです」



本当に、予想外の出来事だったんだ。



「教えて下さいませんか」



が、言葉を交わして行くうち似たような想いがそこにあることに気づく。

願うは幸せ、ただそれだけ。

血の繋がりがあろうがなかろうが、子を思う母の気持ちはみな同じ。

そして国の平和と、しかし答えを出し道を切り開くのは北山と藤ヶ谷の心 次第。

周囲は見守ることしかできない、2人にとってこれは最後の試練となるだろう。

誰かの不幸の上に、幸福は築けないのだから。

そう言って、奥方は自分がいるべき場所へと帰って行き。

俺たちはその一言々を、それぞれが複雑な思いで噛みしめていたんだ。

これだけは、どうする事もしてやれない北山…クッ

自分で決めるしかないんだ、辛いだろうけど男は絶対 子を産むことは出来ないのだから。

胸がキリキリと痛む、あいつの気持ちを考えると遣るせない思いに囚われ。

その夜、誰もが無言のまま布団の中へと入り眠りにつく。

2人の絆が、更に強く結ばれることを祈りつつ。

“婚礼の儀まで後14日”




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