テキストサイズ

桜花楼の恋

第23章 1つの出会い

・北山side

殿「姫、宏姫、よいものを持って来たぞ」



また来たわ、今度はなんでぇ?



殿「これは南蛮渡来の高麗人参というものじゃ食してみ、ニコッ」



朝から何回目だよ勘弁してくれ、ハァ



殿「その…みっ、見た目は美味そうには見えぬが身体にはよく効くそうじゃ」

北「ぁ…‥」



これまた干からびた、おかしな物を。



殿「だめ…かの?ハァ」



んなガッカリした顔しないでくれ頼むからさ。

と、そこへ。



奥「殿!」

殿「みっ、御台」

奥「何をしておられるのです太輔のいぬ間にお独りで」

殿「いや、よは」

奥「おやめ下さいと申しあげたはずです」

殿「たが、ほってはおけぬではないか」

奥「藩主と言えど前触れもなしに姫の部屋へ独りで伺うのは道理に反する事」

殿「しかし」

奥「許しておくれ宏姫」

北「‥‥‥」

奥「なにぶん殿には姫君がおらぬゆえ貴方が可愛くて仕方がないのです」

北「‥‥っ」



その言葉に、ズキンと心が痛む。



殿「子が出来ぬのは身体の芯が冷えておるからとおさじが申しておった」

奥「だからと言って」

殿「ならば温める物を食せば治るやもしれん」



もっ、いいってば…クッ



殿「可哀相ではないか」

奥「…殿」

殿「仲睦まじくしておるというに子が出来ぬとは」

奥「仕方がありません」

殿「まだ18ぞ、これからだというに クッ」

奥「私も出来ませんでしたしかし殿に慈しんで頂き太輔や裕太という二人のお子にも恵まれ幸せに暮らして来れましたよ」

殿「…御台」

奥「血は繋がっておらずとも心は親と子になれまする宏姫とて同じ、ニコッ」

殿「では姫にはもう」

奥「既に話しております、おさじの判断の後すぐ‥のう姫」

北「はい」

殿「さよか、だが子ができぬとも肩身の狭い思はさせぬ」

北「‥‥っ」

殿「たとえ他のおなごが跡継ぎを産もうとも尾張の次の御台所はそちじゃ我が娘はおぬし1人ぞ、それを忘れんでおくれ ニコッ」

北「ぁ…有り難う‥ございます…クッ」

殿「うん、フッ」



心が痛い、クッ




ストーリーメニュー

TOPTOPへ