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桜花楼の恋

第24章 暗雲の兆し

“だって藤ヶ谷の子を産んでくれる、それだけで充分に意味のあることだと思うから”

確かに。

“何よりも北山が繋げてくれた縁だし”

あぁ、フッ

“前向きで行こうよ、これ五関からの伝言”

それから半月後。



殿「まことか」

奥「はい、おさじの話しでは生まれるのは年が明けた春頃だと」

殿「そうか、でかした太輔 これでおの子が生まれれば尾張は安泰じゃ」

藤「‥‥‥」



雪は子を宿す。

が、俺は北山に会いに行けずにいた。



藤「どんな顔をしたらいいのさ、クッ」

丸山「若さん」



だって、そうだろ役目は果たしたから今まで通りまた宜しく。

なんてムシのいいこと…

しかし、躊躇している間にことは起きてしまう。

雪と寝床を共にし始めてから、母上が北山のところへ顔を出していた事は丸から聞いて知ってはいた。



奥「お人払いを」

京本「かしこまりました」



その間、誰も傍へ近づけず2人きりで時を過ごしていた事も。

その上、夜は片時も離れず。

だから大丈夫だと、俺はそれに対し危惧していなかったんだ。

が、思わぬところで露見してしまう事となる。



「きゃあぁーっ」

「はっ」

「おぬし男か」

「わっ、私は」

「誰かある、誰か」



ダダダッ!



丸山「若さん大変やぁー」



責めることなんて出来るわけがない、まだ少年…今までよくやってくれたと感謝の気持ちはあるけれど



殿「奥のおなごに男が混じっていたとは誠か」

家臣「はっ、湯に入ろうとした腰元が先にいた者の姿に大騒ぎ致しまして」

殿「本当にそやつは男だったのだな」

家臣「はい」

殿「して名は」

家臣「お萩と申す加賀より参った宏姫さま付きの腰元でございます」

殿「なに!」



どうする?どうすればいい。



殿「全員を調べよ、おなごの中に男が混じるなどあってはならぬこと」

家臣「はっ、早速にも命じ確かめましてございます」



いくら城主の後継ぎだからといって、奥に関しては口を挟めない



丸山「御台さまを信じるしかありしまへんな」

藤「くっ」



北山、こんなにも傍にいて何もしてやれない自分を歯痒く思いながらも。

時は、暗雲の兆しを漂わせながら過ぎて行く。

尾張の城内で…




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