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桜花楼の恋

第5章 広がる不安

ってことは…



北「やっぱ客と男娼って事だろ?他に、どんな関係があるんだっつうの」



と、そのとき。



「それは自分で作るものなんじゃないの?クスッ」



いきなり後ろから声が聞こえ振り返ると。



宮「初めまして千ちゃんが世話になっているみたいだね、ニコッ」

北「誰だ?おめぇ」



気色悪いくらいニヤけている男が立っていてよ。



宮「宮田俊哉と言います」

北「‥‥っ」



お前が、あの。

そっ、想像してたのとちと違う気が…ハハッ



宮「人と人との関係って用意されてるものじゃないでしょ?ニコッ」

北「んだが」

宮「確かに初めはそうだったかもしれないけど変えることは出来るはず自分たちでね、ニコッ」

北「変える?」

宮「そう、心が動けば」



が、この物言いは確かにそうだわ。



北「おまえ不思議な奴だな言われると妙に納得してしまう千賀の話しでは旅に出てるって聞いてたけれど」

宮「今日、戻って来たんだ」

北「何やってるんだ仕事、見たことのない格好をしているが」



頭に紫の布の切れ端なんか付けててよ。



宮「役者を少々、ニコッ」

北「旅役者か」

宮「まぁ、そんなとこ」

北「ふーん」

宮「千ちゃんに会いたくなって来てみたらいなくてさ、フッ」

北「んっ?」



珍しいじゃん、二階堂んちにでも遊びに行っているのかな?



北「俺のことは、どうして知った?」

宮「風の便りってやつ」

北「はっ?」



おかしなやろうだ、フッ



北「よかったら部屋で茶でも飲んでく?」

宮「いいの」

北「どうせ暇してっしよ、そのうち千賀も帰って来るんじゃね」



藤ヶ谷がいないと。



宮「じゃ、お言葉に甘えて」



“宮田俊哉”

こいつが凄い人気役者だって知ったのは、それから数日後のことだった。

そして、この日 藤ヶ谷は戻って来なくて。

俺は、久々に独りで寝ながら何故だか寂しさを感じていたんだ。

その温もりに、慣れ過ぎたせいか。




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