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桜花楼の恋

第6章 兄弟の絆

そのうえ受け取れば、縋るような眼で見つめて来てよ。

なんだよったく…んな事されると調子が狂っちまうじゃん。

分かった読めばいいんだろ読めばさ、パラッ

“北山へ”

なっ!?これ藤ヶ谷からの文じゃん。

そこには、切ないまでの二階堂の母親への慕情がつらつらと書き記されていた。

こいつが、どんなにか恋慕っているか俺への想いも全てそこから来ていることを。

人は、いや男の性欲とは通常生まれ出た母の胎内への恋しさが。

故郷へ戻りたいかの如く、欲情し本能となって求めるもの。

それに対し、子孫を残そうとする本能を持つ女と結ばれ子を成し。

繰り返される事により、生命は次の世代へと引き継がれてく。

だから、なおのこと同性を好むものは理解されず嫌煙されるのかもしれないな。

が、二階堂は…

その想いを俺に向けていると、そう藤ヶ谷は言っていた。

“甘えさせてやってくれ”

“北山、お前にはこいつの気持ちがよく分かるはず違うか?”

あぁ、十分に。

“一晩だけでいい母親になってやって欲しい頼む”

7歳…か。

俺の弟たちと大して変わらない年の頃だわ、さぞかし寂しい思いをしたんだろうな。

突っ張っているわりには、まだまだカギじゃん粋がってしまっているのも母親恋しさを隠す為か。

俺は、なんだかこいつがイジらしくなって来る。



北「来いよほら、ニコッ」



そういうと、パァーッと表情を明るくし。



ニ「ミツうぅーっ」



飛び込んで来た、その身体を優しく腕の中へ包み込む。

“すべての客が男娼の身体だけを目当てにしているわけじゃない”

千賀を通し聞いた、宮田の言葉が頭の中を過ぎった。

んだな、フッ

少しは、救われた気持ちになりながら。




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