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桜花楼の恋

第6章 兄弟の絆

・玉森side

兄さま…か‥

それから俺は芝居小屋へと連れて行かれ。



父「ほっ、本当に裕太か」

母「こんな…立派な‥若様になって…うぅ‥ヒクッ」

玉「父さま?母さま」

母「裕太あぁーっ、ギュッ」

玉「‥‥っ」



俺には分からない。



宮「良かった…うぅ‥本当に…良かっ‥グスン」



全く顔なんて覚えてないし、だからいきなり父だ母だ兄だと言われても実感が沸かないんだ。



玉「あっ、俺そろそろ帰らなくちゃ」

父「そっ、そうだな向こうさまも心配しているだろうし」

母「また来てくれる?」

玉「ぁ…‥」

父「無理を言ってはいけない、もう我々とは住む世界が違うんだ。こうして会えただけでも」

母「そう…ですね‥クッ」



でも、辛そうな顔をしている。



玉「ズキン」

宮「‥‥っ」



なに、今のは?



宮「俺、送って来ます」

父「頼むな」

母「身体にだけは気をつけて」



心が痛い、切なくて苦しくて俺は、おっ…

この人達の子供なんだと、そう思った次の瞬間に。



玉「ダッ」

宮「タマ!」



父さん、母さん。



父「どっ、どうしたのだ」

母「何かあったの?」

玉「…っ、ハァハァハァ‥教えて下さい」

父「何を?」

母「裕太?」

玉「俺は捨てられたんじゃないんですよね」

父「当たり前じゃないか」

母「どこに我が子を見捨てる親がいます」

玉「なら恨んでいますか」

父「殿様をか?」

母「若君は貴方のことを本当に愛おしそうに見つめられていて」

父「私達は引き離すことが出来なかったのだよ」



ガヤが?



母「眼にいっぱい涙を溜め寂しいと」

玉「そう言ったの?」

父「まだお小さいのに幸せにする護って行くから自分に下さいってな」

宮「周りの大人たち全て、それを見てなにも言えなくなってしまったんだ」



そうだったんだ。



父「私達は、どうしてなのか家来衆に気づかれないよう聞いてみた」

母「そしたら貴方が大切な人と同じ眼をしていて自分の心に安らぎを与えてくれるからって」

父「傍にいてくれたなら強くなれる気がしたとそう言われ」



“我が侭言ってすみませんでした”

ガヤは帰ろうとしたという。

それをあえて止め、聞いてないそんなこと。




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