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蜜蜂オヤジ。

第11章 抑えていた感情。

『さっきは…  …すいませんでした…って言えばいいですか?』


相変わらず
柚さんは可愛いげのない言い方をする


『……でも、あれは本音なの…かな…。』

『……はい!私って… …実は劣等感ばかり感じるんです…桜ちゃんを見てると……』

と柚さんはそう言葉を発したら
ポロポロト大粒の涙を
こぼし始めた…。


そこから
延々と俺は柚さんの話に付き合わされた


柚さんは
器量がよくないから
なかなか彼氏すら見つけることができず
かといって
小さい頃から言葉がキツかったらしく
親友と呼べる女友達も見つからず
すべてに自信をなくしていた女の子だったそうだ
そんなときに
忍と知り合った…

忍は父親の俺が言うのもなんだが
自然体でおおらかな性格だから
そんな柚さんにも
ブスだとかポチャだとか…
キツい物言いとか…
一切気にせずに柚さんに接したみたいで
柚さんは忍の前だけでは
素直に感情を出せる心地よさを
はじめて感じたらしい。


ところが
そんな忍でさえ
桜さんの前では
いつも以上に優しく
いつも以上に格好よく振る舞おうとする風に
柚さんには思えてならないそうで
ついつい桜さんに
きつく当たってしまうようである…


『分かってるんです… 私絶対にイヤな女だってこと……』

柚さんの今までためていた
そんなコンプレックスをきっと
亡くなった志帆は感じ取っていて
上手に柚さんに
気配りをしてくれていたんだろうな…

俺はそんな志帆の立ち回りさえ
気づかなかったことに
申し訳なさを感じた。

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