こんなとこじゃイヤ!
第2章 忘れられない
震える手で携帯を開くと、冬樹さんの携帯番号を押した。
携帯の着信音だけが耳に響くだけで、なかなか冬樹さんはでてくれない。
お願い…
祈るように、胸を掻きむしって――諦めかけて携帯を閉じかけた瞬間――
『もしもし…』
声を聞いただけで、涙がこみあげてくる。
自分では気づかなかった感情。
どれだけ冬樹さんのことが好きなんだって、今なら分かる…
『冬樹さん…おれっ…のこと…っく覚えてくれて…ますか…っ…?』
『えっ、うそっ、真琴くんなの!?』
まさか俺から電話するなんて、思ってもいなかったんだろう。
あきらかに冬樹さんの声は驚いてる。
でもそんなことどうでも良くて、
ただ冬樹さんに、気持ちを伝えたかった。
『おれっ…ふっ…ゆきさん…のことが…っ…ふ…っく…好きです…』
情けないほど声は震えてるし、
涙声で呂律は回らないし、そんな俺に冬樹さんは呆れたかもしれない。
『泣いてんの?』
『ごめんなさい…ふっ、ゆきさんを…っこまらせて…しまって…』
『今すぐにでも駆けつけて、お前を抱きしめたいんだけど…』
『へっ…』
ひょっとしたら、俺は物凄く間抜けな声をだしたかもしんない。
『今、どこにいる?そこから絶対動くなよ。』