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しかし、

「…わっ！！」

背を向けた瞬間、大蛇は逃さまいと、瞬時に私の左脚に胴体を巻き付けてきた。

動きを制止され、私の体は無情にも、地面に叩きつけられる。泣き言を吐く間さえ与えられず、さらに続々と数多の蛇に、体のあちこちを拘束される。

必死にもがくが、この堅牢たる鉄枷は解く事が出来ない。

「痛いっ…！」

数多の蛇に、所々噛み付かれる。容赦無く襲う支離滅裂な激痛に、苦悶する。

「あれ〜？もう終わり〜？」

「おやおや…これは残念」

このままだと、体が引き裂かれてしまう……。

私は、こんな気味の悪い森の中で、こんな気味の悪い怪異に喰い殺されしまうのか？

嫌だ…。そんなの嫌に決まってる！こんな所で死んで、私もめでたく怪異の仲間入り？ふざけるな、私はそんなの望まない。死んでたまるか、私はまだ生きたい。生きたいんだ。だって、まだお母さんに、一度もありがとうって言えてない。喧嘩した弟とも仲直りしてない。友達も、一人は欲しい。まだ大きな夢も叶えてない。

やり残している事はいっぱいあるんだ。やりたい事もいっぱいある。こんな悔いのあるまま死ぬなんて、そんなの死んでも嫌だ！

「こんな所で…死ぬ訳にはいかないんだよぉぉ！！」

渾身の大声を張り上げた。その声は、この不気味な森全体までに轟き、闇の中で木霊する。

纏わりつく蛇達は、それに驚いたのか、一斉に私から逃げていった。危機一髪、なんとか助かった。

「…ふん。腑抜けな蛇どもめ」

一言、謗言を吐いてやり、徐に立ち上がる。