テキストサイズ

ヴァンパイアのCrazy Night

第2章 彷徨える客人

全身が泥塗れの、大きく口が裂けた女が、至近距離に立っていた。

その大迫力な悍ましい姿に、思わず尻餅をつく。

「ネエ、アタシ……キレイ?」

くぐもった低い声で、女は問い掛けた。私は目を瞠って、その怪異を凝視する。

なんとも怖ろしい、現実離れした形相。女は、怯えた私を見つめると、ニヤリと哂った。それは、見れば見る程怖ろしい……。

「ダメだよ〜?油断なんかしちゃ。死んじゃうからね…くくっ」

私はおろおろと立ち上がり、怪異から逃走する。

「…マッテ」

後ろから、怪異は追い掛けてくる。足音の速度が異常に速い。

「マッテマッテマッテマッテマッテ」

足音は次第に大きくなり、距離を詰められる。

「マッテマッテマッテマッテマッテマッテマッテマッテマッテ」

きっと、このまま脳筋に走り続けても、捕まるのがオチだ。悔しいが、スピードに歴然とした差がある。そうなれば、姿をくらましつつ、逃走するしかない。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ