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愛すると言う事…

第8章 《After that episode》


智「……あ。…………もしかして…翔さん…」

潤「あはは(笑)!遅ぇよ!気付くの」

智「…///」

またそうやって、照れ臭そうにでも申し訳なさそうに俯くから。

潤「翔さん帰って来たら、ちゃんと報告して謝れよ?」

智「………」

潤「それと……『ありがとうございました』って、言っといて?」

智「……ん…」

最後の最後に。

智の頭を撫でる。
最初で最後の、フワフワの髪の感触を忘れない様にって思ったけど…それはちょっと違うな、って思い直して手を離した。


見送ろうと立ち上がる智を片手で止めた。

潤「ありがとう。いいよ、ここで」

リビングを出る俺の背中に、『……ありがと、潤』って声が優しくて温かかった。

だから、ちょっとだけ…………涙が零れた。





殆んど無表情だった、あの智が。


あんなにハッキリと、表情が分かる様になってた。



それもやっぱり、翔さんのお陰で。


俺が出来なかった事を、あっさりとやってしまう人。


どんなに早く出会ってても…

例え俺が先に自分の想いに気付いて動いてたとしても。


多分、叶う事はなかった。



出会うべくして出会い。

結ばれるべくして、結ばれたんだと思う。




悔しくない訳じゃないけど、やっぱり二人を見てるとそれをも吹っ飛ばす程に幸せそうだから。



笑顔で居られる場所が、そこにある。


俺の隣じゃなくても、お前がずっと笑って居られるなら…


それが俺の幸せだと、思えるよ。




俺も、そのうちそんな人に出会えるだろうか。



"……大丈夫。…潤なら…大丈夫"



見上げた夜空に、丸い月。



智がそう言って笑ってくれた気がした。







                 終

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