
愛すると言う事…
第6章 episode 6
ほろ酔いの智が、ほんのり頬を染めて言う。
ホストのくせに"15歳の智"はそんな可愛い事言って、和が『可愛い♪』と抱き付く。
『歩いて来るんだった』って呟いた俺に『翔ちゃん飲まないなんてね?』って和が不思議そうな顔をした。
翔「いつもは歩いて来るからな。…今日は車で来たから飲めねぇ」
智「……え?歩いて?」
翔「店も買い物も歩いてた」
和「そっかぁ、大野さん病み上がりだもんね?翔ちゃん優しいぃ♪」
智「……///」
やっぱり表情が豊かな智は可愛い。
俺の中でいろいろと複雑な思いが交差する。
二人で並んで歩いてたあの頃も、当然覚えてない訳で。
歩くのは疲れるから好きじゃないけど、二人で歩くあの時間は俺にしてみたら些細な事だけど大切な時間だった。
淋しいって思いも捨てきれず。
翔「歩いて店まで行けるから…だからあの部屋に来たって事もあるくらいだ。まぁ元を辿れば俺が飯を作ってほしかったんだけど」
智「……飯………言えば作ったのに…」
翔「今日はいい。帰って来たばっかだしな」
閉店まで飲んで食った俺たちは、雅紀がクタクタなのを見て笑いながら帰って来た。
部屋に戻って来てから、智は何故か落ち着きがなくて。
『どした?』って聞いたら『……ベッド、一つしかない』と言い出した。
その事もちゃんと説明すると、あの頃の様に申し訳ない顔をしてた。
風呂に入って出て来たら、先に済ませてた智は疲れたのかソファの上でウトウトしてる。
翔「ベッド行けよ」
智「………」
動かない智は今にも瞼が落ちそうで、俺はそのまま下に座りパソコンを立ち上げた。
店の売り上げなんかを確認して、振り向くと寝息を立ててる。
仕方なく智を抱き上げベッドまで運んだ。
寝かせた智に布団を掛けようとしたら。
パッと目を開けたまま俺を見上げてくる。
翔「…?……どした?」
無言の智。
ただ俺を見上げて、声を発しない。
翔「……智?」
智「……………俺…………生きて、る」
翔「……は?」
智「………何で、俺……生きてる?…だっ、て…海…」
翔「…ッ!…お前……思い出したのか?」
突然、涙を流して『…何で?』と何度も繰り返した。
そっと、抱き締めた。
静かに涙を流して、『……ごめん』と。
ただただ、それを繰り返し…
智は、泣いていた。
