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雪に咲く花

第18章 崩れていく幸せ

黒沢は、雪斗の方を一瞬、振り向いたが、無視してパンをかじり続けた。
「あのっ、ここ座ってもいいかな?教室では食べられなくてさ」
思いきって声をかけてみる。
「別にいいんじゃない。私有地じゃないんだし……」
黒沢がぶっきらぼうに答える。
雪斗はベンチに腰掛けて、弁当を開くと、黒沢に尋ねた。
「黒沢って、いつも、ここで独りで食べてんの?」
「ああ、教室は騒がしくて落ち着かないから」
「悪いけど、俺も颯人が帰って来るまで、ここで食べるから」
「別に、いちいち断らなくたっていいよ」
黒沢は、パンを食べ終えると立ち上がった。
去り際に、雪斗の顔も見ずに呟く。
「ここに、食べに来てもいいけど、すぐに彼らに見つかるかも知れないから気をつけたほうがいいよ」
「えっ……?」
「奴等はしつこいからね。彼らは集団で固まってるから強そうに見えるけど、所詮、一人になるとちっぽけなもんさ」
言い捨てて、去っていってしまった。
普段、無愛想で、余計なことなど喋らない黒沢の言葉に驚いた。
その通りだ。
一人を標的にした、いじめはほとんどが集団で攻撃を仕掛けて来る。
雪斗が、嫌と言うほど経験したことだ。

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