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雪に咲く花

第18章 崩れていく幸せ

「何だよ!クロキンかよ!」
黒沢は、一部の男子から黒沢のくろとバイ菌キンを略して、『クロキン』と呼ばれている。
「ごめん……。ちょっと、つまづいちゃって……」
「ズボンに水がひっかかったじゃないか。どうしてくれんだよ!?」
小さな声で、謝る黒沢に斉藤は蹴りをいれた。
「お前たち、何やってんだ?これはどういうことなんだ!?」
廊下を歩いているときに机が倒れる音を聞き付けた教師が、教室に現れて、目をまるくした。
「あっ!これは黒沢が、転んでこうなったんすよ」
斉藤たちが、黒沢に指を指して言った。
「本当なのか?黒沢」
「はい、僕がやりました」
「そうか、だったら、早くここを片付けなさい」
教師は、黒沢に命令すると、去っていった。
黒沢が、倒れた机を直すと、雑巾を持ってくる。
斉藤たちは、その前に去っていった。
「手伝おうか?」
雪斗も雑巾を持って来て一緒に床を拭きはじめた。
「ありがとう。助かったよ」
「何で……?別に助けたわけじゃないけど……」
黒沢が、助けようとしたわけではないのだろうが、雪斗は、彼のお陰で羞恥を晒されることを逃れたのだ。

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