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雪に咲く花

第21章 よみがえる闇

「福原先輩、何かあったんですか?」
奥から、聞いたことのある女性の声がする。
彼女が顔を出した時、意外な人物に頭を殴られたような衝撃だった。
「まあ、真柴君じゃないの。どうしたっていうの?」
亘の後輩でもある梨香が立っていたのだ。
「嘘っ!……どうして尾崎先生が?……」
昨日から、亘に電話をかけても繋がらない状態だった。
帰ってきたという連絡すらしてくれずに、梨香と何かあったのだろうか?
「福原先生、学校やめてからどうしてるのか心配になって訪ねてきたのよ。福原先生にだって自分の生活があるの。次の就職先のことは、同業者だったし、年齢も近いし、あなたよりも話がしやすいでしょう」
梨香の言葉にどこか嫌みを含んだものを感じる。
「まあな。世の中のことに関しては社会人の尾崎君のほうが知っていることが多いからな」
亘の言葉に疎外感が生じた。
まだ学生である自分には、亘と対等になれないのだと……。
「ごめん……、俺、帰るよ」
「雪斗、何かあったんじゃないのか?」
「もう、今日はいいから……」
背を向けて歩きだす。
「おい、雪斗!」
「先輩、ここは私にまかせて下さい」
梨香が、呼び止めようとした亘を制して雪斗の後に続いた。

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