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雪に咲く花

第21章 よみがえる闇

「真柴君、話があるの」
マンションの外に出たとき、追いかけてきた梨香に呼び止められた。
雪斗が立ち止まって振り向くと、梨香が目の前に近づいてきた。
「何があったか知らないけど、あまり福原先生を困らせないでちょうだい」
関係ない梨香に、そんなこと言われたくないと思っていると、更に彼女は続ける。
「あなたは、福原先生に自分の気持ちをぶつけてるだけで、彼の人生なんて考えてないでしょう」
「亘の人生?」
「そうよ。あなたは、まだまだ子供で、いざとなるとき彼を支える力をもってないじゃない。あの人は、ずっと教師を目指して努力してて、念願叶ったのに、あなたの我が儘のせいで何もかも狂ってしまったのよ。私だったら彼を助けてあげられるわ」
確かに、梨香のいう通り、亘が教師を辞めなければいけなくなった原因の一つは、自分なのかも知れない。
「福原先生はまた新しく道を歩き出そうとしているの。だから、彼のこと、少しでも思うなら、もう彼の邪魔はしないであげて!お願いよ」
梨香の言葉に何も答えずひたすら歩きだす。
力のない自分には、亘を思う資格さえないのだろうか?
自分の気持ちが正しいのかわからなくなり、帰り道を目指した。

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