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雪に咲く花

第22章 本物の悪魔

「ところで木村さん」
光多になりすました黒沢が、木村という家政婦に声をかけた。
「はい、なんでしょうか?」
「この家の鍵って全部木村さんが管理してるんだっけ?」
「ええ……。まあ、そうですけど、ご存じじゃありませんでした?」
木村が不思議そうな顔をする。
「悪いけど、鍵全部貸してくれないかな?この前、ちょっと落とし物しちゃって探したいんだ」
「あら、落とし物でしたら私が探して差し上げますのに」
「いや、ちょっと木村さんにも見られたくないものなんだ。だから頼むよ」
「まあ、お坊っちゃまがそうおっしゃるのなら……」
黒沢の機転に、亘は改めて尊敬の念を抱いた。
自分では、なかなか思い付かないことだ。

「頭がいいな、君は」
「真柴を助けるためです。とにかく早く探しましょう」
家政婦の木村には、黒沢が買い物を頼んだため家の中にはいない。
「それにしても広い家だ。雪斗が見つかればいいが……」
黒沢と手分けして渡された鍵でひと部屋づつ探し始める。
しかし、雪斗のいる形跡はない。
黒沢の話によると、『忍者のモグラの家』というのは地下室のことではないかということだが、どこにも地下室らしきものなどないのだ。

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