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雪に咲く花

第24章 きずあとが癒えるまで

「まあ、いいじゃないか。雪斗が、そのお陰で落ち着いたんだしよ」
歩を慰めるように、颯人が言う。
「まあ、そうですね。そうだ、雪斗さん、今日、用事ありますか?」
「特にないけどどうして?」
「一緒に、銭湯へ行きましょうよ」

歩に連れて来られたのは、改装したばかりの銭湯だ。
颯人も来たかったのだが、怪我のせいで入浴不可能のため、泣く泣く諦めたのだ。
「わあっ!広いなあ」
雪斗が、浴室の豪華さに目を見張る。
小さな露天風呂もあり、清潔感のある、お洒落な作りだ。
しかも、お湯は、茶褐色の天然温泉である。
「時々、家族と入りに来るんです。気分変わっていいですよ」
「へえ、いいなあ」
雪斗は、風呂が壊れた時に、近所のこじんまりした銭湯にしか行ったことないので羨ましく感じる。
「背中ながしましょうか?」
「えっ!……でも……」
「いいから背中向けて下さい」
歩が、垢擦りタオルにボディソ―プを、たっぷりつけて背中をこすり始めた。
「僕、以前、いやなことあった時に下の妹とお風呂に入ったんです。その時、涙を流していたら、妹が小さな手で背中を流してくれたんですよ。あの時は本当に癒されたな」

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