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雪に咲く花

第24章 きずあとが癒えるまで

雪斗は久しぶりに、亘のマンションに訪れていた。
これからは、何のしがらみもなく会えることに、心が躍る。
「俺のせいで、辛い思いさせてごめんよ。もう、絶対手離さないからな」
「亘、もう離れたくない」
亘が雪斗を抱きしめ、唇を重ねようとする。
彼の温もりで、再び幸せに包まれるはずであった。
しかし……。
雪斗の心を覆ったのは、終わったはずの恐怖だった。
男達に抑えつけられ、身体を饕られた記憶が蘇ってしまう。
「いやっ!……離してっ!……さわらないでぇっ!」
突然、雪斗は亘を突き飛ばした。
「おいっ!雪斗!いったいどうしたんだ?」
後ろに押された後、再び近寄ると、呼吸が激しく乱れているようだ。
性暴力による後遺症だと分かり、背中を擦ろうとする。
しかし、背中に触れた瞬間、雪斗は亘の手を拒絶した。
「やだっ!……やめて……」
亘が触れるのを許さず、更に、呼吸困難は激しくなっていく。
「そんな!……どうしたらいいんだ?」
以前、過呼吸に陥ったときは、根気よく背中を擦り続ければ落ち着いたのに……。
体に触れることも出来ず、歯痒さを感じるばかりだ。
「あうぅ……くるし…い……たすけ…て……」

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