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雪に咲く花

第26章 それぞれのスタートライン

「あの時、わたしは教師ではなく、ただの嫉妬深い女だったの。教師として、決してしてはいけない行為をしてしまったのよね。だから、もう一度、きちんと生徒と向き合うためにも、貴方に謝っておきたくて……」
梨香は、亘の退職後、何度か、彼のもとを訪ねていたそうだ。
そのときに、亘に対しての思いを伝えたのである。
「そのときに、はっきり言われちゃったのよ」
『俺にとって雪斗は大切な存在なんだ。理由なんかなく、ただ、一緒にいたい。あいつといると、自分らしくいられるし、幸せな気持ちになれるんだ。だから、雪斗が傷ついた顔は見たくない。この手で守ってやりたいんだ』
亘の言葉に、梨香は、二人の間に自分が入り込む隙などないことを思い知らされたのだ。
「福原先生の気持ち、大切にしないと許さないわよ」
今まで、冷たい眼差しを自分に向けていた梨香が、今は、女の顔ではなく、教師の顔に戻っていた。

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