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雪に咲く花

第31章 ポーカーフェイスの心

「あの、実はこの子、以前、酷い苛めを受けていたことがあって、知らない人に触られたりすると、そのときのトラウマでおかしくなっちゃうんです。彼の代わりに僕がお詫びします。許して下さい」
深々と頭を下げる黒崎の言葉に驚く。
何故、彼が自分の過去を知っているのだろう?
「なにっ!いじめだと……。それは気の毒にな……。それなら許してやろう」
酔っ払いの男性が、ふらふらと立ち去っていく。
「大丈夫かい?」
肩の震えが徐々に治まり、静かに頷いた。

「真柴君が気分悪くなったみたいなんです。僕、送ってきていいですか?」
あれから、黒崎が機転をきかせて、歓迎会を途中で抜け出したのだ。
「落ち着いたみたいで良かった。ああいう場所では、酔っ払いが絡んでくることもあるからね」
黒崎が安心した様子だ。
「迷惑かけてすみませんでした。ところで、どうして俺のこと知っていたんですか?」
「俺のことって?」
酔っ払いから絡まれているときに、黒崎が言っていたことについて尋ねてみた。
「俺が、いじめにあってたことです。誰にも話してないはずなのに」
「えっ!……。本当にいじめられてたの?」
黒崎が驚いた顔で雪斗を見る。

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