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雪に咲く花

第31章 ポーカーフェイスの心

「そうか。まあ、俺も変わり者だからな」
「いえっ!あの、そういう意味じゃなくて……」
うっかり出してしまった言葉の意味を訂正しようとする。
「いい友達がいたんだな。そういう子と似ているなんて嬉しいよ」
実際は友達になる前に、黒沢はどこかに去ってしまったのだが……。
「あいつにも、そんな友達がいたら救われていただろうに……」
黒崎が、何かを思い出したように呟いた。
何故か、寂しそうな瞳をする彼に尋ねる。
「あの、あいつって?……」
「いや、何でもないよ」
黒崎は、それ以上は何も語らず、歩き続ける。
駅にたどり着き、黒崎は雪斗が改札に入るまで見送った。
「じゃあ、気を付けて。みんなには、上手く話しておくから」
「有り難うございました。これからも色々とよろしくお願いします」

電車に揺られながら、不思議な気持ちになる。
「あんな、優しい人だったなんて意外だな」
無口で、ぶっきらぼうな黒崎に苦手意識を感じていたが、さりげない機転で窮地を救ってくれた。
あのまま、あの席にいても、今夜は憂鬱にしか感じなかっただろう。
彼の気配りに、感謝と尊敬の念を抱き始める。
雪斗の中で、ポーカーフェイスの内面は優しい人なのだとイメージが変わっていったのだ。

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