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雪に咲く花

第31章 ポーカーフェイスの心

翌日になり、出社した雪斗の顔を、直樹が心配そうにのぞいた。
「昨日、大丈夫だったのか?急に具合が悪いって帰っちまうからさ。心配したよ」
「うん、大丈夫だよ。家に帰って寝たら良くなったよ。心配かけて悪かったな」
過去の自分が思い出される出来事だったため、真相は話せずにいた。
「それなら良かった。それより、昨日は可愛い同期がいたのは良かったんだけどよ、あの中で高卒は俺と雪斗だけだろ。頭のいいのが多くて、話についていけないから困ったよ。雪斗がぬけてボッチだったんだぜ」
安心した直樹は愚痴り出す。
「直樹も、進学すれば良かったのに」
「そうしたかったけど、親父がリストラされちまって、今は派遣で働いている状態だからな。下に弟や妹もいるし、就職せざるを得なかったんだよ」
「そうだったんだ。ごめん」
直樹の家庭事情を初めて聞き、うかつに言葉を出してしまったことを謝る。

廊下の先から、黒崎が歩いてくるのが見えた。
「あっ、おはようございます。昨日は有り難うございました」
「おはよう、お礼なら昨日も言われたし何度も言わなくていいよ。それに、あの場で抜けられるのは僕しかいなかったからね」
いつものように、ぶっきらぼうに言いながら歩いて行ってしまう。

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