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雪に咲く花

第32章 すれ違いの始まり

「えっ!?亘さん、何言ってるの?今、一緒に暮らしているじゃないか」
「おい、亘兄どうしちゃったんだよ?頭打っておかしくなっちまったのか?」
「亘、いったいどうしちゃったんだよ?」
話が噛み合わない亘の様子に、3人とも戸惑ってしまう。
その時、医師が顔を出した。

診断によると、亘の怪我は軽傷ですんだものの、記憶障害を起こしているとのことだった。
それも、全ての記憶ではなく、亘が地方に上京してから数年程の事までは覚えているようだ。
颯人と子供時代の悠希のことは分かるのだが、皮肉なことに、雪斗に出会ってからの記憶は、きれいさっぱり消えてしまっている。
「そんな……俺のことだけ分からないなんて……」
亘の中で、雪斗のことは見知らぬ存在になってしまっているのだ。
「ねえ、亘、嘘だよね。俺のこと分からないなんて!だって、亘は俺のこと助けてくれたし、抱きしめてくれたし、一緒に亘のお義父さんやお義母さんとも会ったじゃないか?嘘だって言ってよ。こんなのやだよ!」
堪らなくなった雪斗が、亘に訴えかける。
「ごめん……。俺には、君が何を言っているのか分からないんだ」
亘に、雪斗の思いは届かなかった。

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