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雪に咲く花

第33章 亘の疑問

どうやら、良い生徒達に恵まれていたようで、ほっとした。
また、言い方は悪いが、定時制では高度な知識を教えることは求められてはいない。
大学の知識を覚えていない亘でも、無理なく教えることが可能なのである。
妙な教師生活のスタートだが、生徒達の協力により、無事に教師の仕事を務めることが出来そうだ。

亘が、夜の授業で遅くなると、いつものように悠希が夕食を用意してくれた。
「いつも、ありがとな。でも、俺のことは気にしなくていいんだぞ。君だってやることがあるだろ」
「いいんだよ。ちゃんと勉強もしてるし、亘さんにはお世話になっているんだから、お礼のつもりだよ」
悠希が笑顔を向ける。
中途半端に記憶をなくした亘にとって、昔から知っている悠希の存在は心強い。
読書の趣味も合うし、側にいると安心感があるのだ。
家庭が複雑だった亘にとって、可愛い弟と暮らしている気分である。
「うん、美味い。育ちのいいわりには料理が上手だな」
悠希の料理した唐揚げを食べながら褒め称えた。
「本当に!?良かった。遅くまで働いている亘さんには栄養つけてもらいたかったんだ」
自分の手料理を美味しそうに食べる亘を見て、悠希が嬉しそうな顔をした。

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