テキストサイズ

雪に咲く花

第38章 亘の空白

雪斗は帰宅した後、黒崎が印刷してくれた大学のホームページの資料を眺めた。
「ああは、言ったものの俺に仕事と勉強の両立なんて出来るのかな?」
広報部の仕事は魅力的に感じる。
しかし、勉強が得意じゃない自分が、どこまで頑張れるのか不安なのだ。
だが、自分に目をかけてくれた黒崎に答えたい気持ちもある。
また、亘と距離をおいたことで生まれた空虚感から逃れたい気持ちがあるのだ。
「とにかく、やるしかないかな。少しは気が紛れるかも知れないし……」
亘と最後に会ったあの日から、彼を思い出して涙で枕を濡らす日が続いていた。
もし、黒崎が親身になって話を聞いてくれてなければ、気がおかしくなっていたに違いない。
彼の支えがあったことで、心のバランスを保つことが出来たのだ。
「亘だったら、何て言ってくれるのかな?」
それでもつい、亘のことを思い出してしまう。
記憶を失う前の亘なら、きっと、アドバイスしながら応援してくれるだろう。
しかし、今の亘は……。
『男に抱かれた君とは仲良く出来ない』
あれから、何度もこの言葉が頭にこだまして、亘のことを思い出すのも辛い。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ