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雪に咲く花

第38章 亘の空白

「だけどこのままじゃ悔しいだろ!?これから、亘兄のところへ行こうぜ!目を覚まさせてやるよ!」
颯人がますます興奮する。
「俺行かない。今の亘には会いたくないから……」
「それじゃ俺一人でも行くぞ。亘兄には色々言ってやらないとな」
「ごめん、颯人……」
「謝ることねえよ。悪いのは亘兄だ」
颯人は久しぶりに見る親友の姿に、痛々しさを感じた。
雪斗達と同じく、同性同士で交際をしている颯人にとって、彼らの絆は励みになるところもあったのである。
訳も分からず、簡単に二人の繋がりが消えて欲しくはない。

「このまま、こいつらを別れさせてたまるか!」
夕方、雪斗と別れた後、颯人は亘の住むマンションへと向かった。
出来れば、雪斗と3人で会って楽しく過ごしたかった。
しかし、そんなことも許されないほど、雪斗と亘の間に、いつの間にか溝が出来ていたのである。
マンションにたどり着きインターホンを鳴らすと亘の声がした。
「俺だよ。颯人だ」
「颯人か?久しぶりだな」
ドアが開き亘が顔を出した。
「亘兄、会いたかったぜ」
「俺もだよ。さあ入ってくれ」
亘が颯人を部屋に招き入れた。

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