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雪に咲く花

第39章 さよならの時

小説のヒロインのように、ずっと好きだった亘のそばにいたくて上京してから近づいた事、
だが、彼には既に恋人がいた事、
彼が事故で記憶を失ったことを切っ掛けに、嘘の話を吹き込んで彼を独占してた事、
しかし、彼の恋人が壮絶な過去をかかえており、彼らの絆が予想以上に深いものだったと知ってしまった事、
三浦は、静かに耳をかたむけていた。
「そうだったのか?それは辛かっただろうな」
ひととおり話し終えた後、三浦は優しく頭を撫でた。
「僕は卑怯で狡い人間だ。家族からも理解されることなんかなかった。当たり前ですよね。僕みたいなひねくれた人間なんか……」
三浦は立ち上がると以前貸した小説、『空白の扉』を持ってきた。
「以前、僕がこの小説のヒロインに惹かれると言ったことを覚えているかい?確かに彼女は客観的にみれば、気持ちが歪んでいると思うかも知れない。しかし、僕は不器用だけど根が真っ直ぐで純粋な女性だと思うんだ。この小説の続き読んでみないか?」
「先輩、まさか知ってたんですか?最後まで読んでないこと」
三浦には、お見通しだったらしい。

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