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雪に咲く花

第39章 さよならの時

「僕が感想を尋ねたとき、君はヒロインが可哀想で読んでられないと言った。実は、ヒロインには見えないところに幸せがあったんだよ」
「幸せが?……」
「とにかく、読んでみなよ」
三浦に勧められ、悠希はまだ読んでいないページを読み始めた。

好きだった彼が恋人の記憶をなくしたことにより、ヒロインは念願かなって彼と恋人同士になることが出来た。
しかし、彼はふとしたはずみで本物の恋人の存在を身体で感じることがあった。
そんな彼にヒロインは不安になる。
いつか、彼は記憶を取り戻し、自分のもとを去ってしまうのではないかと……。
やっと彼を手に入れることができたのに、彼の心が遠いことを思い知らされるのだ。
そんなヒロインを慕う大学の同級生がいたのである。
同級生の男は、ヒロインの気持ちを知りながら、優しく見守り続ける。
そんなヒロインの方も、包容力のある同級生の男性には心を開き始めていた。
ところが、ある時ヒロインの不安は的中してしまう。
彼が乗ったバスが急ブレーキをかけた瞬間、忘れていた記憶を全て取り戻したのだ。
当然、彼はヒロインと恋人同士だった記憶の方を忘れてしまい、意識を取り戻した本来の恋人のもとに戻ったのである。

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